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埋もれた土地、のち鳥

】*傍点(本来ルビをふった箇所含む)イタリック体で対応。

埋もれた土地、のち鳥

 

 ひと掬いのスプーンに乗せられた臙脂色の、ざらざらとした結晶は、いまだ発見されぬ土地から長い期間を経て運ばれ、彼女の口に入る。日に当たり、きらきらと光るそれ

 

 痛い、と彼女は言う。彼はその四肢を眺めて小首を傾げると、もうひと掬いして彼女の口に入れる。彼女は飲み込むときまたしても、痛い、と口にする。

 

 焼けるような痛みに、彼女は泪する。継ぎ間なく掬われては口に入れられ入れられし、どんどん肥る彼女を見る彼の顔色は変わらない。泪をハンケチで拭いてあげ、開いている口に冷たいスプーンを運ぶ。彼は小首を傾げつづける。

 

 彼女の膨らんでいく身体はなにかを身籠もったように見える。歴史、という名でもあり、哀しみ、という感情でもあるそれは、いずれ彼女の胎内から発見されるだろう。しかし、彼はそれを知らない。

 

 彼女は彼の無知に気色ばむ。一定の間隔でくちびるに迫り来る彼の手首を摑み、曲げた手首ごとスプーンを男の口に突っ込む。女の身体と同程度に膨らむまで結晶を流し込み続ける。

 彼もまた、徐々になにかを身籠もったように見える。歴史、という名、哀しみ、という感情を、胎内に溜め込んで、彼は瞠目し、痙攣しながら頰を泪で濡らしつづける。


 日、暮れ始めたとき、もうふたりはすすんで結晶を貪り始める。スプーンを放り出し手づかみでーーそのとき既に彼/彼女の腕は変化し、口は尖り飲み込みやい変化がある。その嘴で直接啄む、結晶を啄んで急いで飲み込む、飲み込む。もう彼女は痛いとは言わない。言う口がない。もう彼は瞠目しない。見開く瞼がない。代わりになるのは、空気を切り裂く甲高い啼き声。それは歓喜に満ちて、対になって、互い違いにこだまする。

 

 時、劈き、宙から大きな手が伸び、啼きたてる彼/彼女の羽毛を慈しみながらゆっくりと撫で、やさしく包むように撫で、ふたりを覆う羽根はそのたびにくるくると色を変えて、いつまでも定まらないままに。

 

夜が明ける頃、彼ら自体が結晶となって誰かの胎内へ、その深くに潜る、まだ見ぬ土地へ、鎮めて、

 

 

 

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Comments:
習作を書くときは必ず縦書きなので、横で見ると印象がちがう点が難所です。
創作するときには縦書きテクストを使うことにします。
comment by: leaping_on_owl_legs | 2017/10/01 5:09 PM
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